NOTE ノート

はじめてママになるあなたへ
- 妊娠中に読んでおきたい55の大切なこと -

海竜社 2013年9月刊行


自分の命のつながりに思いを馳せ、たくさんの方々との物語りを想起しながら、今の自分をさらけ出して、未来へと言葉と思いをつなぐ、とても豊かな時を過ごすことができました。

妊娠初期
- 命はつながっています -


01 妊娠は自然の営みです。
頭で考えすぎないですべてを受け入れることから始めましょう。

02 おなかに手を当てて赤ちゃんを感じてみましょう。
触れることは命を感じる原点です。

03 命のつながりに思いを馳せましょう。
それは、あなた自身が成熟していく大事なプロセスになります。

04 おなかにきてくれた赤ちゃんは、
きっと何かの意味があって今ここに存在しています。

05 妊娠週数の数え方と十月十日の意味を
知っておきましょう。

06 つわりの時は無理して食べなくても大丈夫。
あなたが生き延びてさえいれば、赤ちゃんはすくすく成長します。

07 体は冷やさない!
体が温まれば、心も温まり、赤ちゃんへのいい循環が生まれます。

08 産院選びはとても大切です。
人間関係がしっかりつくれる、
チームとして信頼できる産院を選んでください。

09 不安や心配になるのは当然です。
赤ちゃんの生き抜いていく力、自分自身の産む力を信じて
日々を過ごしていきましょう。

10 出生前診断自体にいい・悪いはありません。
検査の意味を理解し、夫婦で話し合ってから受けてほしいと思います。

11 妊娠初期は感染症にかかりやすい時期です。
おなかの赤ちゃんにも影響が出ることがあるので要注意です。

12 自分の今の気持ちをダイアリーとして残しませんか?
妊娠という特別な時間の記録はきっと将来の宝物になるはずです。

13 ネット情報に振りまわされないで。
大切なのは、おなかの赤ちゃんを信じる気持ちです。

妊娠中期
- 命はつながっています -

14 あなたは支えられています
感謝の気持ちを持って、
命を育みつなげていく素晴らしさを感じてください。

15 つわりがおさまったら
「早寝・早起き・朝ごはん」の規則正しい生活を!

16 妊娠5ヵ月の「戌の日」に赤ちゃんの健やかな成長と
無事の出産を願って神社にお参りしませんか。

17 パパの気持ちをうまく乗せてあげましょう!
パパには頼れるサポーターになってほしいです。

18 妊娠中はどんどん体が変化していきます。
命をつないでいく仕組みは本当にうまくできています。

19 体調が安定していれば旅行もおすすめです。
夫婦二人の特別な思い出をつくれるといいですね。

20 水は命の源です。
たっぷり摂ることで、血液、酸素、栄養の流れがスムーズになります。

21 ダイエットは絶対NG。適切な体重増加は必要です。
何キロ増えたということより、何をどう食べるかが大切です。

22 体調と相談しながら、意識して体を動かすようにしましょう。
特にスイミングがおすすめです。

23 もし、赤ちゃんの性別にがっかりしてしまっても、
「この子でよかった」と思える日が必ずきます。

24 妊娠中のセックスはお互いの気持ちを大切に。
妊娠中期は一番安全な時期です。

25 赤ちゃんを感じながら、たくさん話しかけましょう。
20週を過ぎたら音が聞こえるようになっています。

26 すべての命を受け入れて育む、
子宮のすごさを感じてください。

妊娠後期
- 生まれてくる力を信じよう -

27 自分の体と子宮を信じましょう。
赤ちゃんの生まれてくる力を信じましょう。
それがすべての原点です。

28 胎動を通して、赤ちゃんとのコミュニケーションを
たくさん楽しみましょう。

29 そろそと赤ちゃんを迎える準備を始めましょう。
生まれたあとをイメージすると、気持ちが明るくなりますよ。

30 産む力をアップする体づくりをしていきましょう。
日々の工夫が安産へとつながります。

31 お産は「物語」です。
実のお母さんとお姑さんに
ぜひお産の話を聞いてみてください。

32 逆子でも赤ちゃんは苦しくありません。
赤ちゃんはその位置を自分で選んでいます。

33 「両親学級」は家族の未来をイメージできるとてもよい機会です。
ぜひ二人で参加してください。

34 大自然の中で自然をまるごと感じてみましょう。
自然に委ねる気持ちを持てると心が解放されていきます。

35 へその緒が赤ちゃんの体に巻いても心配いりません。
よく動く元気な赤ちゃんの証拠です。

36 「バースプラン」で自分のお産をイメージしてみましょう。

37 疲れない範囲で外出を楽しみましょう!
意識を外に向けると、心身のバランスも整ってきます。

38 超音波検査の数値に一喜一憂しないで。
赤ちゃんの個性でもあり、誤差も多いものです。

39 「自然」という言葉にとらわれすぎないことです。
今、できることをしていけばいいのです。

40 帝王切開も立派なお産です。
予定帝王切開のママも胸を張ってお産に挑んでください。

41 産んだ直後から授乳生活はスタートします。
事前に母乳育児の知識を頭に入れておくと安心です。

42 赤ちゃんの眠ったり起きたりのリズムは、
産後の授乳のリズムとつながっています。

43 反った姿勢は腰や骨盤に負担がかかります。
できるだけまっすぐに立って歩くようにしましょう。

44 今から少しずつ予防接種や小児科について
情報を集めておくと産後にあわてないですみます。

45 立会い出産では二人が同じ時間を共有して、
パパもお産に参加することが大切です。

46 陣痛は赤ちゃんとママのタイミングが合ったときにきます。
ゆったりとした気持ちでその時を待ちましょう。

47 「産み方」は「生き方」です。
どんなお産の方法であっても、
自分の「産む力」を信じてお産を迎えてください。

48 赤ちゃんは産道をくぐり抜ける天才です。
赤ちゃんの生まれてくる力を信じましょう。
大丈夫です!

産 後
- あなたはあなたのままでいい -

49 時間がかかったら難産、スピード出産だったら安産、
というわけではありません。
大切なのはプロセスです。

50 これまであなたと赤ちゃんを精一杯支えてくれた
胎盤に感謝しましょう。

51 赤ちゃんのウンチの色や形状は大人と違います。
ただし、オシッコやウンチがあまり出ないときは注意です。

52 母乳は、赤ちゃんが飲みたいときに飲ませてOK。
でも、完全母乳にこだわることはありません。

53 悲しい気持ちになったり、なぜか涙が出てしまうのは
「マタニティー・ブルー〈ズ〉」です。
ホルモンの影響で一時的なものです。

54 赤ちゃんをたくさん抱っこして、いっぱい感じてください。
その時に感じた気持ちが子育てのベースになります。

55 自分が感じていることを
そのまま認めることからすべてははじまります。
あなたはあなたのままでいいのです。

【おわりに】
命を育むプロセスと向き合い、あるがままの自分を感じよう


 「はじめてママになるあなたに」を手にとっていただきありがとうございます。この本は、妊婦健診で僕がママとパパにいつも話している、お産までに知っておいてほしいことを、55のメッセージにまとめたものです。

 妊娠・出産とは、太古から変わらない人類普遍の自然の営みです。原初はすべて本能でお産をしていましたが、やがて、体とお産にまつわる知恵は、母親や周囲の女性から、ママに伝えられるようになりました。ところが、1950年以降、出産場所が自宅から病院となり、出産が医学の対象になったことで、世代を越えて、女性を守り続けてきた知恵と物語は途絶えていき、出産の形式、女性の意識も、世相や風潮とともに、大きくかわりました。

 今は晩産化、少産化が進み、不妊治療も広く普及したことで、リスクの高い妊婦さんが増えました。それでも、昔よりずっと安全な環境でお産ができています。国が豊かになり、医療が発展したおかげです。ところが、妊娠・出産とは、本来、個々によって異なる、パーソナルな体験でもあります。客観的な根拠、効率、結果を重視し、その一方、個々の体や心、思い、プロセスにまで配慮がいきとどかない医学とは、本質的に相性はよくありません。失ってきたことも、少なくなかったはずです。

 命を育むプロセスを管理されればされるほど、人と人の絆が薄れ、生きる力は奪われていきます。受精卵診断、新型胎児染色体検査などの出生前診断の拡がりは、生きにくい社会を反映しています。人は生まれてくる前から篩にかけられる時代となってしまいました。卵子凍結や精子バンク、デザイナーズベビー、代理懐胎(借り腹)の出現にいたっては、命は授かり生まれてくる神秘から、選択して生んでもらうモノへ、とってかわる兆候でないかと危惧しています。

 20011年2月、そうした風潮を案じて、「マイ マタニティー ダイアリー」(海竜社)を出版しました。前書きには、「命がつながってきたこれまでの悠久な時間が、あなたに育み、生む力を、赤ちゃんには育ち、生まれてくる力を授けてくれている」、そして、科学と医学の恩恵に感謝しながらも、一番大切なことは、「自分と赤ちゃんを信じること」と、書きました。

 発刊から約1ヵ月後の、2011年3月11日、東日本大震災、それに続いて福島原発事故が起こりました。気づかないうちに暴走していた文明が、私たちの生活を支える文化を破壊してしまいました。僕たちは、「自然」とは人間がコントロールできるものではないこと、絶対的な「安全」なんてありえないことを思い知ったはずです。

 妊娠・出産も、同じ状況にあると感じています。価値観が多様化するなか、何が正しく、何が正しくないと決めることはできません。ただ、命をつないで、生きぬいてゆくには、人はどこかで覚悟を決め、命を受け入れなければなりません。ところが、先端テクノロジーの無秩序な振興と暴走、情報メディアの氾濫をとめられないばかりか、逆に翻弄され、覚悟のラインを引くことが難しくなっています。もはや、この潮流に歯止めをかけられるのは、外的要因でなく、それぞれに内在する“自然観=あるがままのわたし”しかないでしょう。

 今こそ、命を育むプロセスとそのまま向き合い、あるがままの自分を感じてみることをおすすめします。そうした日々の積み重ねは、生きてゆく軸となるあなたの自然観を蘇らせてくれるからです。何ものにも惑わされる必要はありません。あなたの“物語”を淡々と生きていけばいいのです。それは、どんなに混沌とした時代でも、穏やかに暮らせる、幸せなあり方でしょう。その道標になるようにと願い、55のメッセージを綴りました。毎日、その日の気分にあったメッセージを、繰りかえし読んでみてまた、ください。あなたの奥深いところで、きっと何かが変わっていくでしょう。

 本書の出版にあたっては、「マイ マタニティー ダイアリー」に引き続き、海竜社の古川江里子さんに大変お世話になりました。彼女がいなければ、この2冊が誕生することはありませんでした。また、メッセージの根底にある僕の“自然観”は、生まれてからこれまでに、育ててくれ、お世話になり、関わらせてもらった、すべての方との交わりから育まれました。今回、自分の命のつながりに思いを馳せ、たくさんの方々との物語を想起しながら、未来への言葉をつなぐという、豊かな時を過ごせたこと、感慨無量です。みなさん、一人ひとりとのご縁とつながりに感謝します。最後に、いつも支えてくれている家族に心から感謝します。ありがとう。


- あなたはあなたのままでいいのですー  


                                 2013年9月10日 竹内正人