2023・01・10

　妊娠することで、あなたの体と心にはさまざまな変化がみられます。その変化は人それぞれ、まわりと比較する必要はありません。パートナー・両親・家族・親戚・友人・職場・地域との関係も変わってゆきます。新たな「いのち」を宿したことで、善かれ悪しかれ、人は、人と交わり、人に支えられてしか生きていけないことを実感するからです。社会や世界を見る目も違ってくるでしょう。わが子が生きてゆく未来を想い、憂うようにもなるからです。

　「いのち」をつないでいくということは、あなたの周囲に新たな変化が生まれてくるということ。現在・過去・未来、これまで意識することもなかった、奥深いところまでその影響は及びます。妊娠とはこうして生まれてくる変化と、折り合いをつけてゆく時間でもあります。
　不確かな状況に置かれることで、さまざまな不安が生まれてくるのも自然なことです。ただし、どれだけ最新情報を検索しても、不安の根をとりのぞくことはできないでしょう。掘り下げてゆくことで、かえって不安が増幅することもよくあることです。そこに書かれているのは、あなたのことでも、あなたの赤ちゃんのことでもないからです。

　あなたに知っておいてほしいのは、あなたへと「いのち」がつながってきた悠久の時間が、あなたに育み・産む力を授けてくれているということです。そして、あなたは今まさにその「いのち」を次世代へつなげようとしている。あなたと赤ちゃんはつながっています。あなたはひとりではないのです。
　自分の体と心、赤ちゃんと対話をしながら、あなたにも内在する「いのち」を生み出す力を感じてみましょう。そして、自分と赤ちゃんを信じてください。それにつきると思うのです。この本にも一貫しているコンセプトです。

　妊娠中のあり方は、その後の生き方とも深く関連します。その只中にいるママとパパに、少しでも日々の不安を解消でき、気づきのきっかけとなるメッセージを、産科医で、ひとりのパパでもあるわたしの言葉で語りかけたい。そんな思いが募り、2007年に『妊娠・出産～毎日わかる「そのママ」メルマガ』を個人で立ち上げました。

　2011年、「そのママ」をもとに、100年後・3世代先にまで届くようにと願いをこめた「マイマタニティーダイアリー」（海竜社）を上梓する機会にも恵まれました。同書は多くのママ、パパから好評を得ました。読者が後輩ママさんにプレゼントとして贈ってくれるようにもなりました。ところが、海竜社が45年の歴史の幕を閉じ、2021年、メッセージは途絶えてしまいました。

　この度、旧版の読者でもあった、秀和システムの今村七海さんの働きかけにより、再度メッセージを3世代先の未来までつなげる可能性を授かりました。初刊発行から12年、妊娠をとりまく環境は思いのほか変わっていましたが、ママとパパに伝えたい思いにぶれはありませんでした。今回、現状により適合するよう、数値や表現は少し調整しましたが、メッセージのコンセプトに変わりはありません。

　みなさんには、日々のメッセージを受け取ってもらいながら、その日に感じたそのままの気持ちや出来事をダイアリーに書き込んでもらえると嬉しいです。パパへのメッセージもあります。ぜひふたりで共有してください。
　そうして1日1日を丁寧に過ごしてゆくと、きっと何かが生まれてくるはずです。何かって？それはお楽しみです。

　あなたが感じた変化は、妊娠・出産・育児をこえて、あなたが生きる糧になることでしょう。後で読みかえすと、あなたの原点に立ち戻ることができ、感極まるかもしれません。そんなあなたの思いが、将来のこどもたち、未来へとつながっていくことを心より願っています。そうして「いのち」の息吹もつながってゆくのでしょう。

最後にもう一度、自分と赤ちゃんを信じてください！　
あなたはあなたのままでいいんです。祈・ご安産。

2023年1月10日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　竹内　正人